最近、NHKで再放送している『哲子の部屋』という番組にハマっています。
その日は、『環世界』という概念がテーマでした。
『環世界』とは、生物学者のユクスキュルが提唱した概念で、
『すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、その主体として行動しているという考えで、
普遍的な時間や空間も、動物主体にとってはそれぞれ独自の時間・空間として知覚されているという事』だそうです。
どういうことかをわかりやすくマダニの例で紹介してみます。
人間には五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)がありますが、マダニには視覚と聴覚が存在せず、その代わりに嗅覚、触覚(温度感覚も含む)があり、
とても優れているそうです。このマダニは視覚と聴覚がないのに、うまく哺乳類の皮膚に吸い付きます。
どうやっているのか???
その行動は、人間としては仰天です。
マダニは、森や茂みで血を吸う相手が通りかかるのをじっと待ち続けます。待つ時間も驚異的で数年も待っているものもいるようです。
相手の接近は、哺乳動物が発する酪酸の臭いによって感知し、それを感じたら、その方向に身を投げ出します。
見事、哺乳動物の体表にたどり着くと、マダニは哺乳動物の体温を感じ取り、ガブリと吸い付くわけです。
もし哺乳動物の体表にたどり着けなかったら、そこでは体温を感じることはできないので、失敗したとわかるようです。
先程、『人間としては仰天』と書きましたが、マダニにしてはこれが普通なのです。
この違いこそが『環世界』の違いということです。
この違いが、同じ種族間でもおこりえる。としたら。。。
そう。あなたと私が感じている『環世界』も異なっているかもしれないのです。
(私は小さいころ、目で感じて見えている色は、本当はみんなそれぞれ違うのではないかと不安になったことがありました。
親や年上の人に聞いてみても、私が何を言っているのかを理解してもらえず、苦しんだのを思い出しました。)
番組では、その例として、二つの映画のなかで使われている、同じ曲について話を進めていました。
同じ曲なのですが、聞いた時の雰囲気が違う。。。
その雰囲気の違いは何なのか??
音楽に疎い私には、答えを知るまで全く分からなかったのですが、そのリズムが違ったのです。
片方は4拍子、もう片方は5拍子でした。
しかし、番組内の音楽に詳しい方は、すぐにこの答えが分かった様です。
つまり、その方は、音楽を学んだ者共通の環世界を手に入れていたのです。
このことから、『何かを知る・学ぶこと』は、『新たな知識=環世界を獲得すること』としめくくっていました。
私はゲシュタルト療法という治療法を学んでいます。
そのセラピーの中では、『いま、ここ』で感じている事に意識を向けます。
このことは、環世界を学び、自分の環世界に気づくキッカケになっているのか、と妙に納得がいった次第です。